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第3回:時制 ②

子どもに聞かれて困らない英文法のキソ[子ども英語先生編]
2019/7/3up
子どもたちの疑問や質問の答えに窮したことはありませんか? 子どもたちに英文法を分かりやすく説明するのは、なかなか簡単ではありませんね。 ここでは、『子どもに聞かれて困らない英文法のキソ』(アルク刊)の著者である大竹やすまさ先生に、子ども英語の先生に向けて、本書の中から新たに加筆いただいた内容(全12回)で、分かりやすくご解説いただきます。

第3回:時制 ②

Q.①と②の文はどちらも「わたしが帰宅したとき」の出来事を伝えていますが、どんな違いがあるのでしょうか?

① When I got home, my mother cooked dinner.

②When I got home, my mother was cooking dinner.

お腹がぺこぺこの状態で家に帰ったとき、玄関まで広がる美味しそうな香りに包まれて、ますますお腹が空いてくるというのを誰しも経験したことがあるのではないでしょうか。そんな状況を表しているのは、みなさんもご存知のように②「わたしが帰宅すると、母は晩ご飯を作っているところだった」ですよね。というのも、進行形にはそのときまさに行われていることを伝える役割があるからでした。

では、単純な過去形が使われている①の英文は間違いなのでしょうか? いいえ、もちろんそんなことはありません。夕飯にありつくには少し時間がかかるかもしれませんが、これだって文法的にも正しい立派な英文です。今回は進行形が表す意味について整理していきましょう。

①の英文を理解するためには、こんな英文で考えるのがわかりやすいかもしれません。

(A) This morning, I woke up, washed my hair, and ate breakfast.

「わたし」が今朝したことについて話をしていますが、「起きて、髪を洗って、朝食を食べた」と言っています。当たり前のことですが、ここでは過去形がandでつながれているので動作の「順序」が意識されます。まさか、髪を洗いながら起きて、その状態で朝食まで食べるなんて普通の人にはできませんので、何かが同時に起こっていると考えるのには無理がありますよね。
もちろん、次の(B)のように、andでつながれた動詞が「同時に行われていること」を表すときもあります。

(B) My brother lived and worked abroad.(兄は海外に住んで働いていた)

ただし、この文の動詞は「状態」や「習慣」に近い意味を持っていますので、「動作」を伝えている(A)の英文とは違う意味合いがありますよね。
となると、やはり冒頭のクイズ①は単純な過去形が出来事の「順序」を伝えていると考えるのが自然です。①は、「わたしが帰宅すると、母は晩ご飯を作ってくれた」と言っているのです。

進行形は、動作が「行われている最中」であることを伝える形ですが、言いかえれば、動作が「途中」であったり「未完了」であったりすることを意味します。

(C) I was eating dinner from 7 p.m. to 8 p.m.

(D) I ate dinner from 7 p.m. to 8 p.m.

(C)には進行形が使われているので、少なくとも午後7時から午後8時の間はずっと夕飯を食べていたことがわかりますが、いつから食べ始めて、何時に食べ終わったのかまでははっきりしません。
一方、(D)には単純な過去形が使われているので、午後7時から食べ始め、午後8時には食べ終わったのだとわかります。考えてみると当たり前のことですが、動詞の形を使い分けることで動作の「始まり」や「終わり」をどこまで意識させることができるかが変わってくるのです。

では、このことを子どもたちにどのように伝えればよいでしょうか? 冒頭のクイズについては「進行形が使われているのは、何かが『途中』だったと言いたいんじゃないかな?」と動詞の形の違いについてヒントを出してもいいですし、andでつながれた動詞などは「同時」であることがどれほどあり得ないことかを想像させてみてもいいでしょう。

「whenが表す『特定の瞬間』があるから進行形を使う」と思い込んでいると、思わぬところで英語の表現の幅を狭めてしまいます。大切なのは、解答のパターンやテクニックではなく、動詞の形が表す意味を丁寧に教えて気づかせることではないでしょうか。

大竹保幹(おおたけ やすまさ)

神奈川県立多摩高等学校教諭

大竹保幹(おおたけ やすまさ) 先生

1984年、横浜市生まれ。明治大学文学部文学科卒業。平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省委託事業英語教育推進リーダー。趣味は読書。好きな作家はスティーヴン・キング。著書に『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』、『まんがでわかる「have」の本』(アルク)。

子どもに聞かれて困らない英文法のキソ

『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』(アルク)

大竹保幹(おおたけ やすまさ)

本書では、30パートの英文法の項目ごとに分かりやすい言葉で説明しています。冒頭にはクイズが用意されており、また雑学的な小話も盛り込まれているので、楽しみながら英文法を復習することができます。