第4回:雨が降る確率
Q.①と②の英文はどちらも天気の話をしているのですが、一体どのような違いがあるのでしょうか?
① It will rain soon.
② It is going to rain soon.
英語で「未来」を表す言い方はたくさんありますが、やはりwillとbe going toがすぐに頭に浮かぶことが多いのではないでしょうか。文法の問題集などによっては、これら2つを「=(イコール)」で結んで、英文の書き換えの練習をさせることもありますが、本当はまったく同じ意味を表しているわけではありませんよね? ①と②ではどちらのほうがより確実に「雨が降る」と考えているのか。今回は、be going toがどんな未来を表すのかがポイントです。
be going toは、その形を見ればわかるように本来はgoの進行形なので、すでに何かに向かって動き出していることを伝えることができます。この「計画性」があるかないかというのはwillとbe going toが表す違いのひとつですね。次の英文を比べてみましょう。
①の英文を理解するためには、こんな英文で考えるのがわかりやすいかもしれません。
(A) I‘ll eat out this evening.
(B) I am going to eat out this evening.
夕飯を自分で作るか、それとも少し疲れているから思い切って外食にしちゃおうか悩んだ末に出てくるセリフは(A)「今晩は外食にしよう」です。willはその場で思いついた行動を表すときによく使います。一方、(B)にはbe going toが使われていますので、外食は計画的です。「今晩は外食するつもりなの」と、前もって予定が決められていた印象を与えることができますね。
ある行動を事前に計画していれば、当然、それが近い未来に起こるのだと自信を持って言えそうです。そして、これこそがbe going toが表すもうひとつの意味になるのです。
(C) We ‘re going to be late for class.
(D) He ‘s going to throw up.
(C)「授業に遅れちゃうよ」と(D)「彼、なんか吐きそうだよ」は、決して前もって決められた計画的な行動ではありませんが、バスに乗り遅れたり、友人の顔色が悪かったりすることなどを根拠に「ほぼ確実に起こること」を伝えているわけです。もうそうなることからは逃れることができないくらいの状況とも言えますね。
冒頭のクイズもこれと同じです。be going toが使われている②は、「空がだいぶどんよりしているから」「台風が近くまで来ているから」など、確実な根拠があることが前提となります。be going toを使うのは、ほぼ100%雨が降ると考えているときだということですね。
そもそも②のように自信を持って天気を伝えられるのは、判断がしやすい「近い未来」について話をしているからです。一般的な天気予報のように少し「遠い未来」のことを言うときはbe going toが使いにくくなるのはこのためなのですね。
では、このことを子どもたちにどのように伝えればいいでしょうか。冒頭のクイズであれば、「be going toって進行形に似ているよね? 今にも降り出しそうなのはどっちだろう?」などと動詞の形から推測させてみると、未来表現のニュアンスをうまくつかめるかもしれません。
willとbe going toの「書き換え問題」は、英文の形を練習する上では役に立つこともあるかもしれませんが、「=」などの記号が使われているために「まったく同じ意味なのだ」と思い込んでしまう生徒もいます。ささいな違いかもしれませんが、この違いによって未来の姿が少しだけ豊かになっていることを忘れてはいけません。
神奈川県立多摩高等学校教諭
大竹保幹(おおたけ やすまさ) 先生
1984年、横浜市生まれ。明治大学文学部文学科卒業。平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省委託事業英語教育推進リーダー。趣味は読書。好きな作家はスティーヴン・キング。著書に『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』、『まんがでわかる「have」の本』(アルク)。
本書では、30パートの英文法の項目ごとに分かりやすい言葉で説明しています。冒頭にはクイズが用意されており、また雑学的な小話も盛り込まれているので、楽しみながら英文法を復習することができます。