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第6回:『おはし』はどう説明する?

子どもに聞かれて困らない英文法のキソ[子ども英語先生編]
2019/10/2up
子どもたちの疑問や質問の答えに窮したことはありませんか? 子どもたちに英文法を分かりやすく説明するのは、なかなか簡単ではありませんね。 ここでは、『子どもに聞かれて困らない英文法のキソ』(アルク刊)の著者である大竹やすまさ先生に、子ども英語の先生に向けて、本書の中から新たに加筆いただいた内容(全12回)で、分かりやすくご解説いただきます。

第6回:『おはし』はどう説明する?

Q.外国の方に「おはし(chopsticks)」を説明することになりました。①と②ではどちらがよいでしょうか。

① Chopsticks are something to eat.

② Chopsticks are something to eat with.

「おはし」をはじめとして、日本文化に興味を持っている外国の人は増えてきています。この食べ物には何が入っているのか。この道具は何に使うものなのか。日本で暮らしているわたしたちにとっては当たり前のことであっても、日本を初めて訪れる人にとってみると何もかもが新しく映ることでしょう。

道具の説明には不定詞の「形容詞的用法」がとても役に立つのですが、英語学習者は冒頭のクイズの①のような間違いをしてしまうことが多いのではないでしょうか。説明したい道具は一体何をするためのものなのか。今回は、不定詞が表す「動作の対象」がポイントです。

英語では、名詞に何か説明を加えるときには形容詞を使うのが基本ですが、それだけでは表すことができない「動き」を感じることができるのが不定詞の特徴ですね。

(A) an interesting book

(B) a book to buy

(C) a book to read

たとえば、ある「本」について話をするとき、(A)にあるようにinterestingといった形容詞を使えば「面白い本」だという特徴を相手に伝えることができますが、(B)や(C)のように不定詞を使うことで「動き」を含めた説明をすることができるようになります。(B)は今月おすすめの「買うべき本」、(C)はこれから「読む予定の本」ですね。

ここで大切なのは、どちらの場合もa bookが不定詞が表す「動作の対象」となっているということです。buy a book本を買う)、read a book本を読む)がもとになっていると考えれば、わかりやすいかもしれません。

この用法が少し難しくなってくるのは、次のような例のときです。

(D) someone to love

(E) someone to talk with

(F) someone to talk to

(D)は先ほどと同じでlove someone(誰かを愛する)がもとになっているので、「愛すべき人」だと素直に理解できるのですが、(E)と(F)は前置詞があるせいで学習者にはなんとなく複雑に見えてしまいます。それでも、talk with ~(~と一緒に話す)とtalk to ~(~に話しかける)という熟語が使われているだけで形が変わっているわけではありません。熟語を一つの動詞として考えれば、(E)は「一緒に話す人」、(F)は「話しかけたい人」ですね。

冒頭のクイズもこれと同じです。①のsomething to eatは、somethingがeatの対象だと考えると、eat something(何かを食べる)という動作が浮かび上がります。なるほど、このままでは「おはし」は「食べ物」だということになってしまいます。これではいけません。一方、②のsomething to eat withはeat with something(何かを使って食べる)がもとになっていると考えられるので、「おはし」は「食べるときに使うもの」という正しい説明であるといえます。

では、このことを子どもたちにどのように伝えればいいでしょうか。「eat chopsticksとeat with chopsticksでは意味はどう違うかな?」のように、動詞の使い方を具体的に示すところから始めてみるといいかもしれません。動詞の「目的語」といった文法用語を使った説明は格好はいいのですが、言語を理論的に理解するのは難しいこともあるので、最初のうちは無理をする必要はありません。

世界中で日本食が広まっている今の時代においては、さすがに「おはし」を見てまったく使い方がわからないという外国の方はいないかもしれませんが、自慢げに説明したセリフが「『おはし』は食べ物なんですよ」と聞こえてしまうのは避けたいところです。日本文化に限らず、不定詞が「説明」で活躍する表現である以上、できるかぎり正確に使えるように教えてあげたいですね。

大竹保幹(おおたけ やすまさ)

神奈川県立多摩高等学校教諭

大竹保幹(おおたけ やすまさ) 先生

1984年、横浜市生まれ。明治大学文学部文学科卒業。平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省委託事業英語教育推進リーダー。趣味は読書。好きな作家はスティーヴン・キング。著書に『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』、『まんがでわかる「have」の本』(アルク)。

子どもに聞かれて困らない英文法のキソ

『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』(アルク)

大竹保幹(おおたけ やすまさ)

本書では、30パートの英文法の項目ごとに分かりやすい言葉で説明しています。冒頭にはクイズが用意されており、また雑学的な小話も盛り込まれているので、楽しみながら英文法を復習することができます。