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第10回:関係代名詞の役割は2つの文をつなぐだけ?

子どもに聞かれて困らない英文法のキソ[子ども英語先生編]
2020/2/5up
子どもたちの疑問や質問の答えに窮したことはありませんか? 子どもたちに英文法を分かりやすく説明するのは、なかなか簡単ではありませんね。 ここでは、『子どもに聞かれて困らない英文法のキソ』(アルク刊)の著者である大竹やすまさ先生に、子ども英語の先生に向けて、本書の中から新たに加筆いただいた内容(全12回)で、分かりやすくご解説いただきます。

第10回:関係代名詞の役割は2つの文をつなぐだけ?

Q.公園を散歩しているとき、友人があなたにこんなことを言いました。①と②では状況がどのように異なるでしょうか。

① Look at the children. They are playing soccer.

② Look at the children who are playing soccer.

みなさんは関係代名詞をどのように教えますか? 「形」を教えるのであれば2つの文をひたすらつなぎ続けるようなドリル練習が効果的なのかもしれません。しかし、そこで終わってしまうとこんな疑問が浮かび上がってきます。「ただ2つの文をつなぐだけなら、関係代名詞って必要ないんじゃないの?」

実際、冒頭のクイズは関係代名詞の「形」だけを学んで、「意味」を知らない子どもたちには違いを説明するのは難しいでしょう。①と②の違いをみなさんならどのように教えますか? 今回のポイントは、関係代名詞による名詞の「限定」です。

(A) People speak English.

(B) British people speak English.

(A)は形容詞が付いていないpeopleなので「一般の人」を表しています。この英文の意味が本当かどうかは置いておいて、「世間の人は誰だって英語を話してるよ」と一般論を述べています。一方、(B)ではBritish(イギリスの)という形容詞がpeopleに付けられています。英語を話すのは誰だってではなく、「イギリスの人」なのだと絞っていますよね。これが「限定」です。

(C) Look at the people.

(D) Look at the young people.

形容詞で限定された名詞を使うと、(C)や(D)のような文では見る対象が変わってきます。(C)を言われたら、「その場にいる人全員(the people)」に注目があつまるでしょうし、(D)ならその場にいる人たちの中から「若い人(the young people)」だけに視線が集まります。つまり、限定とは「ある集団から『一部』を選び出すこと」なのです。

これは関係代名詞でも変わりはありません。

(E) I have a sister.

(F) I have a sister who lives in Korea.

(E)は単純に自分に姉が1人いると言っています。特にsisterを限定していないので、家族に姉は1人しかいないのでしょう。ところが、 (F)では様子が違って「韓国に住んでいる姉」がいるのだと対象を「限定」しています。家族の中から特定の姉を選び出しているだけなので、もしかしたら他にも「日本に住んでいる姉」などがいるのかもしれないなと感じるわけです。

冒頭のクイズもこれと同じです。①では「公園にいる子どもたち全員(the children)」を見るように言ったあと、その子たちがサッカーをしていると伝えています。公園にいるみんなでサッカーを楽しんでいるのでしょう。一方、②は関係代名詞でthe childrenを限定しているので、公園で遊ぶ子どもたちの中から「サッカーをしている子どもたち」だけを見ることになります。違いは、公園内で遊んでいる子が他にいるかどうかだったのです。

では、これを子どもたちにどのように伝えればいいでしょうか。「限定」の考え方は無理に関係代名詞を使わなくてもよいので、(A)や(B)のような文から始めるといいでしょう。「『韓国に住んでいる姉がいる』って言っているけど、この人にお姉ちゃんは何人いると思う?」などと、日本語でも同じような意味合いがあることに気付かせるのも面白いかもしれません。

文法の「形」を覚えることはもちろん大切なことですが、何のためにその「形」をつくっているのかを伝えていないと、それはただの作業になってしまいます。せっかくたくさん練習をさせるのですから、「なんでそれを使うのか。どんな違いがあるのか」など、その文法の必要性をしっかりと教えてあげることが大切です。

大竹保幹(おおたけ やすまさ)

神奈川県立多摩高等学校教諭

大竹保幹(おおたけ やすまさ) 先生

1984年、横浜市生まれ。明治大学文学部文学科卒業。平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省委託事業英語教育推進リーダー。趣味は読書。好きな作家はスティーヴン・キング。著書に『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』、『まんがでわかる「have」の本』(アルク)。

子どもに聞かれて困らない英文法のキソ

『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』(アルク)

大竹保幹(おおたけ やすまさ)

本書では、30パートの英文法の項目ごとに分かりやすい言葉で説明しています。冒頭にはクイズが用意されており、また雑学的な小話も盛り込まれているので、楽しみながら英文法を復習することができます。