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第17回:動詞と前置詞の組み合わせも怖くない

子どもに聞かれて困らない英文法のキソ[子ども英語先生編]
2021/2/3up
子どもたちの疑問や質問の答えに窮したことはありませんか? 子どもたちに英文法を分かりやすく説明するのは、なかなか簡単ではありませんね。 ここでは、『まんがでわかる「have」の本』(アルク刊)の著者である大竹やすまさ先生に、子ども英語の先生に向けて、本書の中から新たに加筆いただいた内容で、分かりやすくご解説いただきます。

動詞の熟語って暗記するしかないの?

動詞と前置詞を組み合わせた熟語や句動詞などは、覚える量が多いだけでなく、なんでそんな意味になるのかわからないことも多くあり、英語学習者を苦しめます。では、すべての熟語は「暗記」をしていかなくてはいけないのでしょうか? もちろん、覚えている熟語が多ければ多いほど良いのは間違いないのですが、前置詞の「中心の意味」や「イメージ」を活用することで覚えやすくなるだけでなく、無理に暗記しなくても理解ができるようになったりすることもあるのです。

例えば、look(見る)という動詞には in や for などを始め、さまざまな種類の前置詞と組み合わせて使う熟語があります。look は「目を向ける」というのが基本なので、加えられた前置詞は「見る方向」を表すことになります。

(A) Please look at this photo.  この写真を見てください。

(B) I looked in the drawer. 引き出しの中をのぞいてみた。

(C) I’m looking for my key. 鍵を探しているんだけど。

at には「点」のイメージがあるので、(A)の look at という表現は見て欲しい場所や物をピンポイントで示すときに使われます。同じように、in の「中に入っている」というイメージから、(B)の look in は「中を見る」ことになるわけです。(C)の look for は「探す」という意味の熟語ですが、これも for が持つ「何かに向かっている」という意味を知っていれば、目が何かを求めて動きまわっている様子を想像することもそこまで難しくはありません。

(D) I’m looking in the drawer for my key. 鍵を見つけるために引き出しの中を探しているんです。

(E) You shouldn’t look down on your friends. 友人のことを見下すべきじゃないよ。

(F) The rest just looked on in silence. 他の人たちはただ黙って見ているだけだった。

「イメージ」で熟語が理解しやすくなるのは、前置詞の数が増えても変わりません。(D)には2つの前置詞( in と for )が使われていますが、これは look in と look for を組み合わせた表現なので、「~を見つけるために…の中を探す」ことを意味します。こういった前置詞の合わせ技は決まった形の熟語ではないので辞書をどんなに探しても出てくることはありません。熟語の「暗記」だけに頼っていてはこういった応用表現に対応できないこともあるのです。

もちろん、組み合わせが定型表現として頻繁に使われるものは辞書に載っていることもあります。(E)で使われている look down on がその一例で、副詞 down が持つ「下」のイメージと、前置詞onが持つ「~の上、接触」のイメージが組み合わさって生まれた表現です。down によって誰かを上から見下ろしていることが強調されて、「~を見下す、蔑む」といったネガティブな印象をうまく伝えていますよね。

では、これと非常によく似ている(F)の look on はどうでしょうか。仮にこの表現を知らなくても down がないことから、「見下ろすことをそんなに強調していないのかな」「ネガティブな意味合いがないのではないかな」などと推測することができそうです。実は look on は「~を傍観する」という意味で、まわりの出来事などを一歩引いて見ている様子を表す熟語なのでした。まるで神様が雲の上から地上の世界を眺めている姿を想像してみると、on が生み出す「見下ろす」と「傍観する」のつながりをイメージしやすくなるかもしれませんね。

今回紹介した look だけでなく、他の動詞も前置詞との組み合わせによって実に多彩な意味を表すことができます。動詞が表す「動き」に「方向」や「位置関係」といった単純な情報が加わるだけでなく、そこからさらに複雑に意味を広げていけるのが熟語の魅力といってもいいでしょう。

知っている熟語を増やしていくことは非常に大切なことですが、ただでさえ単語を覚えるのに苦労している生徒にとってはかなりつらい作業です。しかしそんなときこそ、前置詞が持つ「中心の意味」や「イメージ」を活用してみてください。熟語の成り立ちを想像できるだけでなく、場合によっては暗記しなくても意味が分かる表現がぐっと増えることになるはずです。

大竹保幹(おおたけ やすまさ)

神奈川県立多摩高等学校教諭

大竹保幹(おおたけ やすまさ) 先生

1984年、横浜市生まれ。明治大学文学部文学科卒業。平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省委託事業英語教育推進リーダー。趣味は読書。好きな作家はスティーヴン・キング。著書に『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』、『まんがでわかる「have」の本』(アルク)。

まんがでわかる「have」の本

『まんがでわかる「have」の本』(アルク)

大竹保幹(おおたけ やすまさ)

大人になっても英語の苦手意識がなくならない人は必読! 基本動詞を軸に、文法をはじめとした「英語のしくみ」をまんがでのやさしい講義形式で学びます。

子どもに聞かれて困らない英文法のキソ

『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』(アルク)

大竹保幹(おおたけ やすまさ)

本書では、30パートの英文法の項目ごとに分かりやすい言葉で説明しています。冒頭にはクイズが用意されており、また雑学的な小話も盛り込まれているので、楽しみながら英文法を復習することができます。