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第1回:名詞

子どもに聞かれて困らない英文法のキソ[子ども英語先生編]
2019/5/7up
子どもたちの疑問や質問の答えに窮したことはありませんか? 子どもたちに英文法を分かりやすく説明するのは、なかなか簡単ではありませんね。 ここでは、『子どもに聞かれて困らない英文法のキソ』(アルク刊)の著者である大竹やすまさ先生に、子ども英語の先生に向けて、本書の中から新たに加筆いただいた内容(全12回)で、分かりやすくご解説いただきます。

第1回

Q.次の英文はどちらがより自然な英語でしょうか。

① I like a dog.

② I like dogs.

①ではdogにaが付いていて、②ではdogsという複数形が使われています。形こそ違うもののどちらも文法的に正しい文ですし、伝えたいことも「イヌが好き」ということで共通しています。英語を学び始めた子どもたちがこういう英語をスッと使ってくれたら、①でも②でも拍手をしたくなりますよね。 それでも、どちらが英語として自然な表現かと聞かれたら、それは間違いなく②のほうです。みなさんなら、この違いをどうやって子どもたちに伝えますか? 今回のポイントは複数形が表す意味です。

ご存知のように、複数形は人や物などが「2つ以上」であることを表す形です。1つのものにはaやoneを付け、2つ以上なら複数形にするというルールは、英語の基本中の基本なのですが、複数形にはただ単に名詞の「数」を伝えるだけではない効果があるのです。 たとえば、次の2つの文はどちらも学生の通学方法について答えていますが、なんだか印象が違う気がします。

(A) Students go to school by bus.

(B) A student goes to school by bus.

複数形が使われている(A)のほうは「生徒はたいていはバスで通学しているよ」と一般的な話として伝えていますが、(B)では「あるひとりの生徒の例」についてだけ話をしているかのようです。 他にもこんな英文はいかがでしょうか?

(C) Do you have books in your house?

(D) Do you have a book in your house?

どちらも「家に本ある?」と尋ねていますが、はなから「お前の家には本は1冊くらいしかないだろう?」と本の数を限定している(D)の聞き方は不自然ですよね。一方で、(C)は一般的な話として家に本があるかどうかを質問しています。

このように、複数形は「一般的なことを表す」のによく使われます。だから、自分が好きなものを伝えるときには、I like dogs. のように複数形を用いたほうが自然な英語になるというわけです。

では、このことを子どもたちにどう伝えればいいでしょうか? 伝え方に正解があるわけではありませんが、たとえば冒頭のクイズであれば、「イヌが好きな人って、1匹だけじゃなくてたくさんのかわいいワンちゃんに囲まれていたいなって思うでしょ?」と、イヌ好きなら誰もが思うような一般的な気持ちを想像させるのもいいかもしれません。 生徒の通学方法の例で言えば、「バスで通っているのって、たぶん1人だけじゃないよね」と、学生の数を考えさせることが大切ですね。

日本語では何匹いても「イヌ」だけで済ますことができるだけに、わたしたちはどうしても名詞の扱いまで気が回らなくなってしまいがちですが、 複数形が英語のニュアンスに関わるとても重要な役割を持っているということは、やはり、子どもたちには伝えておきたいですね。

大竹保幹(おおたけ やすまさ)

神奈川県立多摩高等学校教諭

大竹保幹(おおたけ やすまさ) 先生

1984年、横浜市生まれ。明治大学文学部文学科卒業。平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省委託事業英語教育推進リーダー。趣味は読書。好きな作家はスティーヴン・キング。著書に『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』、『まんがでわかる「have」の本』(アルク)。

子どもに聞かれて困らない英文法のキソ

『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』(アルク)

大竹保幹(おおたけ やすまさ)

本書では、30パートの英文法の項目ごとに分かりやすい言葉で説明しています。冒頭にはクイズが用意されており、また雑学的な小話も盛り込まれているので、楽しみながら英文法を復習することができます。