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第11回:notを使うと反対の意味になる?

子どもに聞かれて困らない英文法のキソ[子ども英語先生編]
2020/3/4up
子どもたちの疑問や質問の答えに窮したことはありませんか? 子どもたちに英文法を分かりやすく説明するのは、なかなか簡単ではありませんね。 ここでは、『子どもに聞かれて困らない英文法のキソ』(アルク刊)の著者である大竹やすまさ先生に、子ども英語の先生に向けて、本書の中から新たに加筆いただいた内容(全12回)で、分かりやすくご解説いただきます。

第11回:notを使うと反対の意味になる?

Q.①と②の英文はどちらも「きのこが好きでない」と言っていますが、どちらのほうがよりきのこが苦手でしょうか?

① I don’t like mushrooms.

② I don’t like mushrooms very much.

英語では文の内容を否定するときにはnotを使うのが一般的です。特に形容詞や副詞と組み合わせて使うと、not clean(きれいじゃない)はdirty、not fast(早くない)はslowという反対の意味を持つ語と同じような意味を表すことができます。これは語彙が少ない学習初期の段階ではとても便利なことなのですが、「notは意味を真逆にする」と思い込んでいると伝わるメッセージが変わってしまうこともあります。

冒頭のクイズの①と②では「きのこの苦手度」が異なりますが、notのしくみに慣れていないと本当に嫌いなときに間違って②を使ってしまいそうです。みなさんはこの違いをどのように教えますか? 今回のポイントは「部分否定」です。

基本的にnot(~ない)は動作や状態、程度などを否定する語ですが、否定がいつも反対の意味を表すとは限りません。

(A) I don’t know.

(B) He won’t go.

(C) I don’t like him.

know(知っている)が否定されている(A)「知らないよ」は、knowの反対を表している例です。これだけを見ればnotが意味を真逆にすると思ってしまいそうですが、(B)「彼は行かないよ」の場合はどうでしょうか。この文はただ「『行く』という動作をしない」とだけ伝えていて、go(行く)の反意語であるcome(来る)の意味になっているわけではありません。(C)「彼のこと、好きじゃないな」は言われたら悲しい気持ちになる文ですが、反意語であるdislike(嫌い)とはっきり言うよりも何かオブラートに包まれているような感じです。つまり、notが表す否定は、動詞本来の意味によってだいぶ雰囲気が変わってくるのです。

形容詞や副詞もnotが付いたときには意味に変化が加わります。

(A) “How are you?” “Not bad.” 「元気?」「まあまあかな」

(B) The rich are not always happy. お金持ちがいつも幸せというわけではない

(C) I’m not feeling very well. ちょっと気分が悪いのですが

「元気?」と聞かれて、(A)のように答えることがよくあります。これはbad(悪い)の反意語であるgood(良い)ほどではないものの、「悪くはないよ」とか「まあまあ」という気分を表す言い方ですね。(B)や(C)は副詞のalways(いつも)、very(とても)があるので、そこも含めて否定されます。すると、「『いつも幸せ』というわけではない」や「『とてもいい気分』というわけではない」という部分否定を表すことになるのです。否定文は、特に副詞など程度を表す語があるときには、意味の変化に注意しなくてはいけません。

冒頭のクイズもこれと同じです。①はlikeだけを否定しているので、「好きではない」ですが、②ではvery much(とても)という副詞も含めて否定されています。「『とても好き』というわけではない」ということですから、「あまり好きじゃない」とか「すごい好きってわけじゃない」くらいの気持ちです。多少苦手かもしれませんが、嫌いということでもなさそうですね。

ではこのことを子どもたちにどのように伝えればいいでしょうか。「『好き』と『嫌いじゃない』はどっちが好きな気持ちが強いと思う?」など日本語で否定文が表す意味合いを考えさせてもいいでしょう。慣れてきたらgood、not good、bad、not badなどを「良さを伝える順」に並び替えてみたりしてもいいかもしれません。

notは意味をいつも正反対にするというわけではなく、goodとbadのような反意語の組み合わせだけでは表せないような微妙なニュアンスを伝える役割があります。notを上手に使うことで、「好き」「嫌い」の二択に収まらない多様な表現が手に入るのだということを教えてあげましょう。

大竹保幹(おおたけ やすまさ)

神奈川県立多摩高等学校教諭

大竹保幹(おおたけ やすまさ) 先生

1984年、横浜市生まれ。明治大学文学部文学科卒業。平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省委託事業英語教育推進リーダー。趣味は読書。好きな作家はスティーヴン・キング。著書に『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』、『まんがでわかる「have」の本』(アルク)。

子どもに聞かれて困らない英文法のキソ

『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』(アルク)

大竹保幹(おおたけ やすまさ)

本書では、30パートの英文法の項目ごとに分かりやすい言葉で説明しています。冒頭にはクイズが用意されており、また雑学的な小話も盛り込まれているので、楽しみながら英文法を復習することができます。